地球規模の海水循環に影響か
北極に近い北大西洋などの海水中の塩分が、20世紀後半の50年足らずの間に約0.2%減っていることが、米海洋大気局(NOAA)の研究でわかった。ここは、地球規模の海水循環(熱塩循環)で沈み込みが起きている重要な海域で、「塩分濃度低下は、循環の乱れを引き起こして気候に影響を及ぼす恐れもある」と専門家はみている。
海水1キロには35グラム程度の塩分が含まれているが、NOAAのグループが55~98年に世界各地で観測された200万件以上の塩分濃度データを分析したところ、グリーンランド東方の北大西洋の表層で約0.1グラム、割合で0.2%ほど塩分が少なくなっていた。
海水は、温度と塩分濃度で密度が変わる。冷たく、塩分濃度の高い水は密度が大きくなって深層に沈み、エネルギーや物質を運んで地球の気候に影響を与える熱塩循環の原動力となる。
海水の塩分濃度が高いうえ、海水が冷やされやすい北大西洋は、沈み込みが起きる主要な海域と考えられている。この沈み込みの結果、温かい表層水の北向きの流れ(メキシコ湾流)ができ、欧州が温暖になっている。
気候予測の計算モデルに詳しい米国プリンストン大の真鍋淑郎・上級研究員は「計算機による数値実験では、0.5グラム分の濃度低下で熱塩循環が半減する。0.1グラムでも、影響が出ている可能性はある」と指摘する。
塩分濃度低下の原因としては、地球温暖化が考えられている。極に近い地域の降雨量が増えたり、グリーンランドなど陸上の氷が解けたりするためだ。
NOAAの研究代表者ティム・ボイヤー研究員は「我々の研究はまだ、塩分の現状を明らかにしただけで、熱塩循環が弱まっているとは言えない。塩分変化の原因究明が急務だ」と話す。
花輪公雄・東北大教授(海洋物理)は「気象の現状から、塩分濃度の変化は温暖化が原因と考えてほぼ間違いない。注意深く見守る必要がある」と話している。
今回の成果は、今春採択予定の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第4次評価報告書への掲載が検討されている。
(朝日 1/4)
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