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2007/08/24

環境にしわ寄せがいく貧困と格差

***************** マエキタミヤコさんのコラム *****************

貧困と環境って別の問題じゃないの。そう思う人もまだ多いのですが、実はずっと前から世界の貧困問題と環境問題は密接な関係にあります。

1992年にブラジルで開かれた国連地球サミットのテーマは「サステナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)」でした。いまの開発は持続可能ではない、だからどうしたら持続可能な開発ができるか話し合おう、という主旨に史上最多の150を超える国々が集ったのです。

実はこの「サステナブル・ディベロプメント」という言葉が登場するのは、1987年に発表された報告書「アワ・コモン・フューチャー(『我ら共有の未来』)」から。この報告書は、第1回地球サミットのちょうど10年前の1982年、国連ナイロビ会議で日本によって提案され、人権尊重の元ノルウェー首相ブルントラント女史が座長を務めたブルントラント委員会(環境と開発に関する世界委員会)が5年かけて調査提出しました。以降、2回とも地球サミットのテーマはこの「サステナブル・ディベロップメント」。1972年のストックホルム国連人間環境会議から始まって、世界が環境問題について話し合ってきた歴史は30年になりますが、そのうち20年は「環境は南北格差ぬきには語れない」でした。

それはそうです。先進国のライフスタイルから生じる環境負荷が地球に重くのしかかり、そのしわ寄せが地球上のあちこちに来ている、それが環境問題の本質です。この構図が世界の共通認識になったので、先進国も自分たちが生き残るために、ライフスタイルの変更に取り組んでいます。ところが一方で貧困から脱したい途上国は、とりあえずここを生きのびなければ明日はない、という現実から、地球環境の持続可能性に対し、リアリティが持てない。取り組めない。それでは先進国がいくら環境に取り組んでも、無駄な努力になってしまいます。

■みんなが今のライフスタイルで過ごすためには地球がいくつ必要?

エコロジカル・フットプリントという単位があります。これは人間活動により消費される資源量を分析・評価する手法のひとつで、「地球何個分」と表します。1970年の人間の活動は地球0.8個分でしたが、いまは地球1.2個分とオーバーしています。これがひずみの原因です。もし世界中の人たちがアメリカ式のライフスタイルをしようとするとき、必要になる地球はなんと5.6個。日本のライフスタイルでも2.7個必要です。

そしてほとんどの途上国は、先進国のライフスタイルを目指して、経済発展しようとしているのです。目指すところを変えないと、地球全体が大変なことになってしまいます。いま中国とインドがめざましく経済発展していますが、同時に多くの環境負荷が放出されています。その負荷はもちろんその国の人たちにも降りかかりますが、他の国の人たちにも降りかかってきます。地球はひとつしかなく、空気も水も鳥も魚もハリケーンも、国境の通関手続きで止めるわけにはいきません。

それまで車に乗っていなかった人が、億単位の人数で、ガソリン車に一斉に乗るようになって、CO2を排出する。外貨を稼ぐために、熱帯雨林を広範囲に皆伐伐採して、単一作物のプランテーションを作り、広範囲に農薬散布する。伝統的な農業ではやらなかったような広範囲を焼き畑する。現地住民の健康被害だけではなく、原生林や熱帯雨林、広範囲の森林が損なわれることで、地球全体の生態系システムが崩れていき、被害が地球全体に広がっていきます。温暖化防止、CO2削減の観点からはもちろんのこと、それ以上の生物多様性、地球生態系の保全という観点からも、途上国の経済発展の目標を修正し、そのために、率先して先進国がその経済発展と豊かさのビジョンを提案し、実践しなければなりません。

■戦争と環境問題の一因となる貧困をなくすために・・・

さらに戦争は最大の環境破壊。もちろん出るCO2量は平常時とは桁違いですし、様々な兵器から出る環境汚染物質の拡散を考えると、いくら環境へ配慮したり、取り組み行動したりしても、戦争がひとつ起きればパーになる、と考えてもいいくらいです。人々のモラル、未来への希望が低下する、という重大な損害をまったく計算に入れなかったとしても戦争は大問題です。

貧困・格差は明らかに暴力と内戦と戦争の温床です。戦争というと日本は関係ないや、と思う人が多いのですが、戦争をしている政権と経済的なつながりがあると、荷担していると見なされることがあります。国際社会のモラルとして、トラブルが起きている地区に対しては、トラブルを鎮めようとするか、あるいはそれが無理なら遠ざかる、という方法が一般的です。ダルフール州で虐殺が起きているスーダン政府を中国が支援している問題について、国際社会が「それはやめて」とプレッシャーをかけているのも一例です。日本ではそもそもあまり知られていませんが、シビリアン・コントロールを徹底させるためにも、もっと報道されてほしい問題です。

「開発」は、貧困国・途上国が貧しさから脱して人間らしい文化的な生活を享受する、という意味ですが、そしてこの貧困もまた、自然災害というより人為的なものであることが、近年鮮明になってきました。この20年、世界の貧困問題は取り組みが呼びかけられながら、悪化しています。途上国と先進国の関係と、経済援助を仕組みから見直す必要があります。

貧困解決のビジョンはすでに示されています。債務帳消しで、解決される貧困があるなら(それが非常に重要で有効な手段だと考えられているようです)、日本も国際社会と一丸となって協力することも、環境への重要な取り組みです。人間の叡智が試されています。縦割り権益ワールドの既成概念を脱して、やわらかく領域を横断しながら、最適な解決方法への近道をめざすためにも、貧困と環境をいっしょに話すボキャブラリ(語彙)をみんなで共有したいものです。

[8月24日/Ecolomy]

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