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2007/10/03

温暖化の生態系への影響

●警鐘を鳴らすIPCC第4次評価報告書
 
2007年に、第4回目となる地球温暖化に関する評価報告書を発表したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化問題の認識や動向に影響力を持つ機関である。IPCCの第2作業部会と呼ばれるワーキング・グループが、生態系と人間社会に及ぼす影響について評価を行い、第4次評価報告書第2作業部会報告書を発表した。

三つのワーキング・グループからなる一連の作業部会の報告書とともに、2007年4月に発表された同報告書は、すべての大陸とほとんどの海洋において、多くの自然環境が地域的な気候の変化、特に気温の上昇により、今まさに影響を受けていると言及した。主な影響としては、以下のものが挙げられる。

世界中で温暖化の影響が現れているものとして、春季現象(植物の発芽、鳥の渡り、産卵行動など)の早期化や、動植物の生息域の高緯度・高地方向への移動、北極および南極の生態系(海氷生物群系を含む)や食物連鎖の変化などがある。

また、多くの生態系の復元力が、気候変化やそのほかの要因により低下する可能性が高いとしている。例えば、植物・動物種の約20~30%は、全平均気温の上昇が1.5~2.5℃を超えた場合、絶滅のリスクが増加する可能性が高い。さらに、今世紀半ばまでに、陸上生態系による正味の炭素吸収はピークに達し、その後は弱まるか、あるいは排出に転じる可能性が高く、気候変化を増幅することがある(フィードバック効果)。

●次々に表面化する生態系の変化
 
地球温暖化の研究は、日々発見を生んでいる。例えば、国立環境研究所は、高山植物の生息域の縮少や、南方系の昆虫が北方へ移動する現象が観測されていると発表した。テキサス大学の生物学者カミール・パーメザン(Camille Parmesan)氏とウェズリアン大学の経済学者ゲイリー・ヨーヘ(Gary Yohe)氏は、生物界において「グローバル・シフト」が起きていると、2003年に英科学誌「ネイチャー」に報告した。調査対象となった677種のうち279種が約6km北上し、約6m高度が上昇する現象が見られたという。

また、リーズ大学のクリス・トーマス(Chris Thomas)教授は、「2100年までに2~3℃気温が上昇する」というIPCC第3次報告書の中位シナリオを用い、調査を実施した種の15~37%が2050年までに絶滅すると、2004年に同じく「ネイチャー」に発表した。この絶滅の割合は、気温がさらに上がれば、21~52%に上昇するという。

●打撃を受ける農林水産業
 
生態系と地球温暖化の関係に不確実性はあるが、温暖化に対して対策を講じなかった場合の代償は大きい。2005年に英国政府が発表した スターン・レビュー は、IPCCの見解を踏まえ、温暖化に対して努力をしなかった場合に地球温暖化が引き起こす経済的な損失は、毎年少なくとも国内総生産(GDP)の5%に相当すると試算した。

自然資源により営まれる農業・林業・水産業などの第一次産業は、最も温暖化の影響を受けやすい。IPCC第4次評価報告書も、平均気温が1.5~2.5℃以上上昇し、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、生態系の変化により、生物多様性と生態系からの財とサービスにマイナスの影響が生じることを予測している。

温暖化により、稲作・漁業の収穫・漁獲高に地域的な変化が現れ、調達が困難になることも今後考えられる現象である。例えば、日本人の主食であるコメの収量が低下し、収量地域は北上することが予測されている。コシヒカリの栽培を例に取ると、50年後には気温の上昇で東北地方南部以南の多くの地域で、約10%収量が減るという。また、海面水温の上昇により、サンゴ礁や水産資源も影響を受ける。海水温が1.5℃上昇すると、養殖のマダイやトラフグが生息困難になり、2℃上昇すると、サンマやイワシなどの漁場が北上するという。

このような形で科学の側からは、気候変動による自然資源への影響についての予測をしている。これらの予測を受け、人間社会の側からはどのような行動を取るべきだろうか。

(日経ECOマネジメント 10/2)

▼PDF「IPCC第4次評価報告書第2作業部会報告書 概要」(公式版):環境省

▼PDF「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響と適応策に関する研究事例について」:農林水産省

▼PDF「政策立案者向け要約 排出シナリオに関する特別報告 気候変動に関する政府間パネル作業グループIII特別報告」(仮訳):財団法人 地球産業文化研究所

▼PDF「スターン・レビュー要旨 気候変動の経済学」(国立環境研究所及びAIM研究者グループによる和訳):アジア太平洋統合評価モデル(AIM)

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