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2007/10/02

カーボンオフセットの意義を考える

三菱総研地球温暖化対策研究グループ・橋本賢氏のコラム

■個人が排出を「相殺」するカーボンオフセット

このところ、排出権取引と併せて「カーボンオフセット」という言葉をよく耳にするようになりました。カーボンオフセットとは、個人や企業が自発的に自らの二酸化炭素(CO2)排出を排出権購入により相殺する取り組みです。例えば、あなたが自動車の運転や家庭生活でCO2の排出を完全に避けることはできません(ハイブリッド自動車に乗ったり、省エネを励行することで排出を多少なりとも抑えることはできますが)。そこで、排出権購入を通じて排出削減に寄与するわけです。

海外では、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が旅客に対してカーボンオフセットのサービスを提供しているのが有名です。具体的には、航空券をオンラインで購入する際、カーボンオフセットを専門に提供するClimate Care社にリンクし、同社のウェブページ上で航空機搭乗に伴う排出量を計算するとともに、オフセットに必要な金額をクレジットカード決済などで支払う形になっています。

ちなみにこのページでロンドン→東京間(片道)の排出量を計算すると、1.08トン(二酸化炭素換算)、オフセットの代金は8.12ポンド(約1900円)と表示されました。

このようなビジネスは欧州だけでなく、米国でもベンチャー企業のTerrapass社などが同様のサービスを提供することで知られています。

■日本でも一部で導入始まる

欧米ではカーボンオフセットが浸透しつつあるのに対し、日本ではこれまで、ごく一部のNPOなどが植林に対する寄付を募るといった形態で行われていたに過ぎませんでした。ただ、日本郵政公社(日本郵政)が2008年用にカーボンオフセット付き年賀はがきの発売を決めたり、イオンや西友がカーボンオフセット付き商品への取り組みを始めるなど、最近になって国内の動きも急速に活発化してきています。

このように盛り上がりを見せるカーボンオフセットも、「削減努力を怠るための免罪符ではないか」との批判や、オフセットの基礎となる排出権や排出削減活動の適切性に対する懸念など、様々な課題が指摘されています。しかし、私たちが自らの努力で削減するにはどうしても限度があるわけで、専門の事業者に削減活動を行ってもらい、その効果を排出権の形で提供してもらう仕組みは、社会全体で効率よく排出削減を進めるうえで合理的なアプローチと言えるでしょう。

■ビジネスに乗るかがポイント

現在はカーボンオフセットにおける排出権購入を一種の寄付行為と見なす向きが強いのですが、こうした取り組みを拡げるためには、むしろカーボンオフセットをビジネスとして成立させることが重要となるでしょう。「個人レベルで排出を削減すること」を商品やサービスの付加価値として消費者にアピールできるかどうかがポイントです。ちなみに前出のClimate Care社も「寄付」ではなく「サービスの対価」としてカーボンオフセットの代金を受け取っています。

日本では現在、京都議定書目標達成計画の見直しが行われていますが、2012年までに国内努力だけで目標達成することが非常に厳しくなってきている一方で、環境税や排出権取引制度など、拘束力の強い追加施策を打ち出せていません。つまり、日本は「排出権を誰かが買わねばならないが、誰が買うべきかを決められない」状況にあります。

このような状況に対処する上で、法規制を伴わないカーボンオフセットの進展は、政府・産業界ともに好ましいと思われます。個人的には、ここ数年のうちに国を挙げたカーボンオフセットのキャンペーンが打ち出される可能性があると考えています。

(日経Ecolomy 10/2)

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