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2007/12/12

「産業界、消費者にエコナビを」――<エコプロ2007を前に(下)>山本良一・東大教授

12月13日(木)から始まるエコプロダクツ2007の見所は何か。実行委員長の山本良一・東大教授に、環境ビジネスを推進する産業界のアプローチを聞いた。

――地球温暖化対策が急がれる中で、産業界は何をすべきでしょうか。

まず企業が果たすべき地球的な責任を自覚することです。脱炭素エネルギー社会、循環型社会、生物多様性を維持する社会にシフトすることの必要性を改めて認識することです。

企業にお願いしたいのは、環境性能の高い製品を使い続けることが地球と人間にとっていかに必要か、ということを消費者に対しエコ・ナビゲーションして欲しいです。その中には環境教育や環境コミュニケーションという視点も含まれます。

ところが現実の企業のマーケティング活動はまったく違います。製品性能を全面に打ち出して宣伝するだけ。そこを転換してもらわないといけない。

環境性能に優れた製品を買うことを推進するNPO法人(非営利団体活動法人)グリーン購入ネットワーク(GPN)の活動を通じた雰囲気では、環境製品を購入している“緑の消費者”の比率は25%で、そうでない消費者は75%。その比率を逆にしないといけません。

企業の「エコナビ」活動で消費者のほとんどを緑の消費者に変えないといけないと思います。

――エコナビでうまくいった企業の例はありますか。

ノンフロン冷蔵庫の各社の取り組みはうまくいった例ではないでしょうか。確かに各社の技術開発には時間がかかりました。欧州は冷凍庫の壁を冷やすのに対し、日本は冷気を送り込む方式で、冷却技術が日本と欧米は違っていて、その点が時間がかかりました。グリンピースがかつて指摘しましたが、日本の電機メーカーは規制が厳しい欧州向けにはノンフロン冷蔵庫、日本ではフロンの冷蔵庫を生産している、と批判されたのがきっかけとなり、結局日本でもノンフロン冷蔵庫が当たり前になりました。

いかに日本の産業界が世界の先進事例を作り出すか。エコビジネスや環境産業で世界のリーダーになるには、そこが重要なポイントになるでしょう。

しかし、まだまだ環境に配慮した製品が順調に売れているとはいえない段階です。それは、企業経営者が環境効率は低くても、既存の設備を長く使いたい、と考えているからです。エコ製品を導入するにはコストが必要となります。投資資金の回収には時間がかかるため、短期的業績を重視する企業は、なかなか投資に踏み切れません。

したがって、今後は株主に対する環境教育といったエコナビゲーションも企業は重要になります。

――環境面でいま日本の産業界はリーダーといえるのでしょうか。

環境面で日本が勝っている分野はごくわずかです。たとえばトヨタ自動車のハイブリッド車が累計販売台数100万台を超えたとか、鉄とかセメントとか素材の生産エネルギー効率は世界一です。

しかし狭い意味の環境ビジネス、例えば焼却技術や水処理技術などは圧倒的に欧米の企業が強い。OECD(経済協力開発機構)が分類しているエコビジネスで1、2位は米国と欧州。日本は3位です。

――日本と欧米の違いは何でしょうか。

3点あります。まず1点目として、環境規制と長年の歴史があります。経済産業省の分科会で指摘しましたが、1つは欧米のエコビジネスは民需主導なのに対し、日本は公共事業に頼った。上下水道や焼却設備に代表されますね。したがって価格競争力が低い。製品のパフォーマンスは高いものの、コスト競争力で劣るのです。

2点目として欧米は環境技術を売り込むための出先機関が国外にあって大宣伝をします。米国の例では日本の電話帳、イエローページのような環境関連ビジネス専門媒体が無料で配られています。地域や国家総がかりで自国の環境技術をアピールしようとしています。日本ではそうした活動はまったく行われていません。

3点目は、NGOとの連携。欧米では進んでいます。たとえば、日本のNGOでアジア太平洋地域の国に進出して長期間活動している組織はまだ少ない。すると現地で、どの企業の製品を採用するか、となると、NGOの活動実績が浸透していない日本の企業は競い負けしてしまうのです。そのほか銀行からの資金供与や政府の保証とかODAがらみも含めて、総括すると日本は全力を挙げてアピールする力が欧米諸国に比べて弱すぎます。

その意味でエコプロダクツ展は、国内のみならずアジア全域に広げて展開することが必要でしょう。

――今年のエコプロ展の見所と、今後の役割はどうなっていくと思いますか。

エコプロ展が成功することは99%間違いありません。21世紀は環境の世紀です。今後はエコプロダクツ以外は売れないような社会に変わっていきます。

東京モーターショーの来場者数が今年は減りましたが、これは当然のことです。温暖化ガス排出削減や化石燃料を使い続けることの是非などが盛んに議論されている中で、モーターショーにエコカー以外のクルマを出展したら、企業の社会的責任自体が問われる時代です。いまどきこんな地球破壊型のクルマを作っているのか、と社会的批判を浴びかねません。

国内の自動車販売が伸び悩んでいるのは、化石燃料を使うクルマ離れが進んでいるという見方もできるのではないでしょうか。したがって、自動車メーカーは単にクルマを作って売るビジネスから、サステナブルビジネスへ転換していかないと未来はありません。

例えば、愛知万博のときに障害者が自由自在に動けるモビリティなどが出展されていました。このほか、ICT(情報通信技術)を駆使してクルマの流れをスムーズにするシステムつくりも必要でしょう。

――技術開発によるCO2排出削減のほかに、キャップアンドトレードに基づく排出権取引という議論もありますね。

温暖化ガス排出削減に向けて、排出権取引も含めてあらゆる手段を総動員することが肝心です。

まず、今後の世界における日本のあるべき姿を見通して戦略を考えてみましょう。中国が日本の経済力を上回るのは目に見えています。時間がかかるかもしれませんが、おそらくインドも台頭してきて日本を抜くでしょう。すると日本は世界の経済大国ではなくなるのです。

そうなったとき、EUにおける現在の英国や北欧諸国のような国を目指すべきでしょう。アジア共同体の中で、影響力を持ち、最も文化と科学技術が発展した国となるべきです。そして、中国やインドといった需要がある場所で鉄やセメントを作ればいいのではないでしょうか。

日本企業が進出した国・地域で炭酸ガスを排出したと批判を受けたときは、日本の最先端の省エネ技術を使っているので、それを使わない場合よりも温暖化ガス排出削減に役立てっていると反論できます。

繰り返しますが、あらゆる手段の総動員が肝心。

なぜならこれは戦争なのです。炭素税、排出権取引、総量削減の数値目標、ありとあらゆる手段をすべて活用することが不可欠です。

低炭素社会へ国家総動員、がキーワードです。それができるかできないか、で日本の産業のこれからの国際競争力が決まります。 

[Ecolomy 12/11]

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