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2009/01/18

エコブームを「終わりの始まり」にしないために

国際協力銀行(JBIC)環境ビジネス支援室長・本郷尚氏のコラム(日経エコロミー 1/10)

エコが花盛りだ。昨年12月初めに東京ビッグサイトでエコプロダクツ展が開催され、大学なども含む約760の企業や団体が出展、17万人以上が訪れたという。これだけの規模と内容の環境イベントは世界中探してもどこにもないだろう。会場はエコ製品が溢れており、社会人や主婦だけでなく、小学生が授業の一環で訪れるなど多彩な来場者に驚かされる。

お正月に家でくつろげば、新聞やテレビからエコを企業イメージとする広告が飛び込んでくるし、驚くことにテレビドラマに「エコ・テロリズム」まで登場。エコはもはや一部の先進的な人たちだけの話題ではなくお茶の間にまで普及した。もちろん、何がエコなのかわからないものもあるし、あるいは本当にエコなのか、というものもないわけではない。しかし、環境への関心が高まることは良いことだ。そしてこれだけエコがウリになるということは、エコは市民から評価され、また企業にとっても新分野を開拓する良いイメージとして定着したということだろう。

■市民権を得たカーボンオフセット

エコブームのなかでカーボンオフセットなど排出権の活用も進んでいる。雑誌や年賀状などにカーボンオフセットを付けるタイプや、イベントや旅行などの二酸化炭素排出量を計算し、それをカーボンオフセットとして相殺するタイプが主流で、昨年1年間で一気に普及した。

東京と札幌でカーボンオフセットについてのセミナーを開いた昨年6月ごろには(関連コラム「カーボンオフセット花盛り」参照)、新聞記事などでもまだ丁寧な解説が必要だった。それが今では当たり前のように行われている。カーボンオフセット年賀状も2年目とあって飽きられるのではと心配したが、昨年を上回る実績だ。

これだけ普及し市民権を得た理由の1つは、排出権として「京都クレジット」を使ったことだろう。2007年9月に発表したロハス雑誌「ソトコト」の排出権付定期購読募集は、それまでの民間規格のクレジットではなく、値段が一ケタ高い京都クレジットを使い、また投資事業を写真付きで紹介する「ソトコト証書」を渡すことで「見える」ようにした。それまでのオフセットにはない斬新なアイデアであり、日本でのブームのきっかけとなった。

「排出権」は目に見えないし、身近ではなかった。「排出権を使ってCO2排出量を相殺」と言われても、排出権への信頼感がなければ、市民は動かない。国連が管理している京都クレジットは、市民から信頼を得るのに効果は大きかったと思う。

■市民感覚とのズレを突破口に

普及とともに異論が出てくるのは当然だ。ある環境雑誌では「オフセットはエコの安売りではないか」との読者の意見が紹介されていた。自分で減らす努力をせずにお金でエコを買うのはおかしい、との批判だ。エコを名乗る以上、CO2排出の削減効果は厳密でなければならないという意見もあるし、買い物する際、基準が統一され信頼できるエコラベルがあったほうが便利、などと現実的な要望もある。異論、反論大歓迎だ。意見が出てこそ改良が進む。

もちろん詐欺や誇大広告となれば犯罪であり、取り締まらなければならないが、行き過ぎた規制はせっかくの自発的な取り組みに水を差してしまう。カーボンオフセットを引っ張ってきたのは「他人と違ったことをしたい」という気持ちだったからだ。

カーボンオフセットは定番商品となり、安心して利用できるようになった。しかしそれは新鮮さが失われていくことを意味する。市民は常に新しいものを求めている。ブームが「終わりの始まり」になるのではもったいない。

信頼できるクレジットを利用したことでカーボンオフセットが普及した。今度は新しいクレジット作りを応援してはどうだろうか。

京都クレジットの主な発行対象である、途上国での省エネプラント建設などCO2削減事業以外にも、省エネ家電普及や森林を守ることは立派な環境貢献といえる。しかし、今のルールではこういった活動は京都クレジットにはなりにくい。

これは市民感覚とズレがある。ここにヒントがある。つまり政府や投資家より少しだけ早く動き、制度作りを後押ししようということだ。誰もが納得する環境貢献だが、まだ制度では認められていないものを選ぶのがコツだ。

■森を守ってオフセット

一例として森林の保護をみてみよう。世界の温室効果ガスの20%が森林減少によるものだ。これは年間16億トンと、日本の年間排出量の1.2倍の量であり、このまま放置するわけにはいかない。2013年以降のポスト京都の枠組み作りの中でも森林減少防止は重要な課題であり、今年の国際交渉の目玉だろう。そして何より森林を育て、守ることの大事さは、自然とともに歩んできた日本人は肌で感じている。温暖化対策にも役立つなら、後押しする価値がある。

森林から木材を切ったり畑に開墾したりするのは、地元民の生活には欠かせない。「地球のために切るのを止めろ」と言うのは乱暴な話だ。森林保護を優先するというのなら、別の仕事や生活の補償が必要だが、それを世界中で行えば膨大な資金が要る。

そこで森林の保護で減らした分のCO2に削減目標に使えるクレジットを与えれば、大量の資金の調達が可能となるというアイデアが出てきた。森林保護の効果を厳密に測ることは、植林の効果を測ること以上に難しい。この技術的な課題に各国の損得勘定という本音が絡み合って、制度作りの国際交渉は難航している。

議論だけでは何も起こらない。まずは実際に排出権を作って経験を積みながら改善するというやり方もあるはずだ。排出権の分野で先駆的な取り組みで知られる世界銀行が進める「森林保全ファシリティー」もその1つだ。制度ができる前に動かすための課題ははっきりしている。

1)森林クレジットの正しい「価値」はいくらか。京都クレジットのようなはっきりした相場感はまだない。売り手と買い手で新しく作らなければならない。

2)森林クレジットの買い手の意見をもっと聞こう。買う人がいなければ「取らぬ狸の皮算用」に終わる。売り手の期待が高いのは良いことだが、バランスが大事だ。

3)早く森林クレジットを作ろう。CO2が確実に減るものでなければカーボンオフセットには使えない。でもカーボンオフセットには大胆さも欠かせない。やりやすいところから始めよう。

■市民の「気づき」で低炭素社会を

信頼できるクレジットを選んで、日本でカーボンオフセットは市民権を得た。次は市民の支持をバックに新しいものを作る番だ。カーボンオフセットは「気づき」を与え、ライフスタイルを見直すきっかけになる。そして社会や経済を変えることもできる。チャレンジがカーボンオフセットの最大の貢献ではないだろうか。

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