弱毒型でも脅威減らず 新型インフル「フェーズ5」
世界保健機関(WHO)が警戒レベル「フェーズ5」を宣言し、新型の豚インフルエンザのパンデミック(世界的流行)懸念が高まった。このウイルスは弱毒型と見られると、国立感染症研究所の田代真人インフルエンザウイルス研究センター長が28日明らかにした。
今後のウイルスの変化は予断を許さないが、かつて世界中で数千万人が死んだスペイン風邪のような事態は避けられる可能性が出てきた。しかし、これで安心することは決してできない。パンデミックの恐ろしさは、死者の多発に限らない。
WHO西太平洋地域事務局の葛西健(たけし)感染症対策官は「世界中で同時に患者が多発する。これがパンデミックの真の脅威だ」と話す。
患者が多数出ると、大震災時などと同様、医療資源が極端に不足する。また、入院不要の軽症でも、1週間程度は仕事や家事ができない。学校閉鎖は感染封じ込めには有効だが、子らに対応するため、健康な大人も仕事を休まなくてはならない。これらは、社会機能をまひさせてしまう。
軽症者の爆発的発生は、このような社会の混乱を世界中で引き起こす。パンデミックは「経済災害」であり、弱毒型でも脅威が減ったわけではない。国内へのウイルス流入や感染の広がりを抑える対策をゆるめてはならない。
(朝日 4/30)
◇人・人感染続けば毒性上がる恐れも 豚インフルエンザ
豚インフルエンザ感染がメキシコや米国のほか、欧州でもじわじわと広がっている。
世界全体での今後の被害の大きさをはかる上で重要なのは、感染の広がりと、豚インフルエンザウイルスが人にもたらす重症度だ。
広がりをみるには、世界保健機関(WHO)が出す警戒レベルが重要。WHOは27日、「人から人への感染が広がっている」としてレベルを「フェーズ3」から「4」に引き上げた。今後の焦点は「5」に上がるかどうかだ。
判断した27日時点では、メキシコでは人から人への感染が連続して起こっているが、その他の国では二次感染がなく散発的という評価だった。フェーズ5へは、こうした二次感染による集団感染が2カ国以上で起きていると判断された場合に引き上げられる。
また、どの程度感染者が死亡するのかが大きな問題だ。例えば、日本で毎年のように流行するインフルエンザと似た程度(0・1%以下)なら、あまり恐れる必要はない。
WHOの緊急委員会に委員として出席していた田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長は28日の会見で「今回のウイルスは強毒型になるような変化は起きていない」と話した。米疾病対策センター(CDC)の動物実験でも、今回の豚インフルエンザは弱毒型だと見られている。
ただ、インフルエンザのウイルスは変異しやすい。弱毒型であっても、人から人への感染が連続して起これば、人に免疫の乏しいタイプに変わり、重症度が高くなることもある。1918年のスペイン風邪も弱毒型。最初は軽い症状から始まり、次第に重くなったとされる。
インフルエンザに詳しい菅谷憲夫・けいゆう病院(横浜市)小児科部長は「今回のウイルスは今後、重い症状を起こすように変化する可能性がある。一方で、あまり広まらないで世界から消えてしまうこともありうる」と語る。
感染者の症状はメキシコ以外では軽いとされるが、米国での入院患者は5人。外岡(とのおか)立人・元北海道小樽市保健所長は、「発病者の数からみれば決して軽くない」と指摘する。
「東南アジアに広がれば、(強毒性の)鳥インフルエンザとまざりあったウイルスが出てこないか心配だ」と伊藤寿啓・鳥取大教授。「この先どうなるかは各国の水際対策によるのではないか」と話す。
(朝日 4/29)
◆市民のための新型インフルエンザ対策ガイドライン(小樽市保健所)
★H5N1-強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ★
★「新型インフルエンザ対策ガイドライン(フェーズ4以降)」(厚生労働省)
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