« ストレス下の男性は自分と似ていない女性を選ぶ、研究 | トップページ | TV番組参加者、操作次第で「拷問者」に 仏で心理学の実験 »

2010/03/17

国力も産業も劇的に衰退させる「少子化」の破壊力

【プレジデントロイター 3/15】 大前研一の日本のカラクリ

◇日本を覆い尽くす「引き籠もり」現象

世界中をまわっていて今、日本ぐらい元気がない国はない。特に異常だと思うのは、グローバリゼーションの進展に背を向けるような日本人の内向き、引き籠もり現象である。

端的に表れているのは就職戦線で、公務員人気が復活して専門予備校の受講生が急増しているという。また女子の場合は四大を卒業してもまともに就職できないということで、途中で看護学校などに乗り換える人が増えている。例年なら定員割れするような看護学校の倍率が今年は4倍、有名校では6倍にもなっているというから驚く。今や全入時代の大学よりも看護学校に入るほうが大変なのだ。

目指すのは公務員や看護師という超安定志向。今の若い世代から世界に雄飛しようという気構えや気概はまったく感じられない。留学生の数は減る一方だし、大手のグローバル企業に就職しても海外に赴任してもいいという社員は1割にも満たないだろう。

社内での上昇志向もない。「エコノミックアニマル」と言われた我々のような獰猛世代は、会社に入ったら社長を目指すのが当たり前だった。しかし、今の新入社員の目線の高さはせいぜい課長クラスまで。トップに手が届く取締役になっても、アンケート調査をすると社長になりたいと思っている人はほとんどいない。取締役で、もう十分。むしろ、これ以上責任の重い仕事はやりたくないと考えるのだ。

志や目線が低いから難しい仕事を嫌がる。先般、軽井沢で駐車場を経営している友人が、地元のハローワークに駐車場管理人の求人を出した。月給18万円。寒い中でも車が来るのを待つだけの退屈な仕事である。1日1台の車も来ないことだってある。にもかかわらず、1名の募集に若者を含めて400人の応募があったという。

友人は試しに何人かに面接してみた。ところが「将来、やりたいと思っていることは?」「特技は?」などと質問しても、「別に……」とテンションの低い答えが返ってくるばかり。全員がそんな調子だから気分が滅入って、彼は途中で面接係を投げ出したそうだ。要するに、入り口にセンサーでも付けておけば機械でもできるような超やさしい仕事には群がるのだ。

1971年に日本マクドナルドを立ち上げ、2002年まで社長を務めた藤田田さん(故人)によれば、同社のアルバイト経験者は当時で延べ450万人に達したという。今の若い世代は高校時代からバーガーショップやコンビニでアルバイトをしているから、マニュアルでこなすような業務が仕事だと思っている。だから会社に入って創意工夫を求められる仕事に直面すると戸惑うし、上昇志向もないので面倒な仕事を振られると会社を辞めてしまう。

仕事を通じてスキルを身に付け、少しずつ出世の階段を上っていく、という考え方はもはや大半が持ち合わせていない。だから同じパターンで転職を繰り返すのだ。チャレンジ精神もなければ上昇志向もなく、簡単な仕事だけを追い求める。贅沢を言わなければそれで食っていける。いや、夢など持たなければ、それで満足さえするのだ。

若い世代がそうなったのは、やはり親の育て方に大きな問題があると思う。娘がいる母親が将来、子供になってもらいたい職業の第1位は何か。看護師である。理由は安定性と先々、自分の面倒を見てもらえるから。そして、息子になってもらいたい職業は公務員なのだ。こういう親に育てられたら、おおむねリスクを取るような生き方はしなくなるだろう。

戦後半世紀以上が経過して、リスクを取るという発想が日本人の染色体から消えてしまったように思える。

『坂の上の雲』ではないが、戦前の日本人は清国やロシアと戦った。第二次大戦ではアジア大陸の奥地まで進軍し、南はインドネシアの島々まで占領した。

私の父はノモンハン(旧満州)の生き残りで冬はマイナス40度になると聞いていたが、実際にハルビンで氷祭りを見に行ったときには確かにマイナス30度だった。その昔、インドネシアのスラバヤというジャワ島の寂れた町に行ったときには、ここも日本軍が占領していたと聞いて寒気がした。プロペラ機にモールス信号の時代である。助けを呼んでも援軍が来るまで3週間以上かかる。ほとんど孤立無援。攻められれば絶対に守りきれない。

私は日本軍の足跡を辿るのが案外好きでいろいろ訪ねるのだが、そのたび、我々の先代はよくぞこんなところまで進行したものだと思う。帝国主義は反省するにしても、その蛮勇には感心させられる。今の日本人の染色体のどこを探しても、そんな勇気も度胸も見当たらない。民族的な連続性がまるで感じられないのだ。

◇生命力あふれた二男坊以下の存在

なぜ日本はこうも情けない引き籠もり国家になり果ててしまったのか。考察を重ねると、一つの社会構造の変化にたどりつく。「少子化」である。

終戦直後の昭和20年代、日本の農民人口は全体の50%以上を占めていた。江戸から明治に引き継いだ時代には8割以上が農家で、多くの世帯は子供が5人も6人もいるような大家族だった。しかも家父長制の時代だから、家は長男が継ぐ。すると二男から下は、どこぞで自分で食い扶持を探さなければならない。

戦前に満州や朝鮮半島に勇躍渡った人たちを見ると、二男から下ばかりで、長男はほとんどいない。ハワイやブラジルに渡った移民の人たちもそうだ。

戦後は戦後で、二男以下が職を求めて東京に出てきた。彼らが創業当時の松下(現パナソニック)やソニーやホンダに入って、後に海外に雄飛する戦略の中核を担ったのである。

今時のビジネスマンは海外赴任を打診されると、断る理由を3つも4つも挙げてくる。一番多いのは「長男だから母親の面倒を見なければならない」。二番目が「家内が仕事をしているから」だ。我々の時代なら張り倒されている。

それでも強引に行かせようとすると、「家族崩壊は会社の責任ですからね」「2年で呼び戻してくださいね」など、捨て台詞を残してしぶしぶ(単身)赴任する。しかし気持ちは日本に向いたままだから、現地の言葉を勉強したり、地元のコミュニティに溶け込む努力もしない。中国辺りだと近いから週末ごとに日本に帰ってくる。

昔の日本人ビジネスマンが現地に骨を埋めるような覚悟で海外に飛び出していったのは、やんちゃな二男、三男が多かったから。食うために自分で道を切り開くのは当然と考えていたし、後顧の憂いもあまりなかったからだ。

今は一人っ子の長男が多いから、親を置いてはいけないという気持ちはわかるし、そういう理屈も通りやすい。親としても長男に離れていってほしくないと考える。だから誰も海外に飛び出そうとしない。

内向き、下向き、後ろ向きという日本の引き籠もりの現状を足し合わせて考えると、今の国力低下の元凶は、高齢化よりも少子化によるエネルギー喪失のほうが大きいのではないかと思う。

これで食い詰めている状況なら、自分で生きるために動き出すしかないのだが、親は金を持っているし、500円のコンビニ弁当でそれなりに腹が満たせる環境だから、危機感は薄い。かくして30過ぎても親掛かりのパウチっ子が大量増殖したのだ。

中国は国策として「一人っ子政策」を進めてきた。一人っ子政策の先頭を走っているのが今の30代。今後は少子化問題が懸念されるといわれるが、「上に政策あれば下に対策あり」という国だから、現実は農家の戸籍を借りたりしながら2人3人と子供をつくっていたのが実情だ。

しかし、日本の場合は、何もしないのに一人っ子ばかりになってしまった。今や日本の最大の世帯は、「単身者」「シングル」である。かつては20代後半までには結婚して子供を生み、4人家族というのが平均的な家庭だった。だからNHKの料理教室のレシピは4人分だったのだ。今は多すぎるということで2年前から3人分のレシピを紹介している(それでも多すぎる!)。

今は晩婚だから20代から30代にかけてはまだ独身、30代から40代にかけては離婚して1人に、50代、60代以降は定年離婚や熟年離婚、死に別れて1人と、あらゆるセグメントで単身者が一番多い。スーパーやファミリーレストランが苦戦する理由は簡単。ファミリーがいないのである。逆にコンビニやユニクロが流行る理由もこれで説明できる。

少子化という社会現象が日本経済、企業社会に与える影響は思っている以上に大きい。消費を喚起できないのも、企業の活力が落ち込んでいるのも、不景気の一言では片付けられない。少子化をとらえたマーケティングや人事政策を行えば、もっと深掘りできるはずだ。そして政治。少子化によるエネルギー喪失を埋め合わせる方策を、真剣かつ早急に考えて打ち出さなければ、人口構造的にリスクテイカーのいないこの国は(そして企業も、家庭も)どんどん萎んでいくだろう。

☆持続可能な社会と金融CSR【HP版】はこちら♪

☆「環境と金融」HP開設6周年を迎えて

★いい情報に出会えたと思われた方は、Click me!人気blogランキングへ
Blog_ranking_2

|

« ストレス下の男性は自分と似ていない女性を選ぶ、研究 | トップページ | TV番組参加者、操作次第で「拷問者」に 仏で心理学の実験 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/84872/47831761

この記事へのトラックバック一覧です: 国力も産業も劇的に衰退させる「少子化」の破壊力:

« ストレス下の男性は自分と似ていない女性を選ぶ、研究 | トップページ | TV番組参加者、操作次第で「拷問者」に 仏で心理学の実験 »