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2010/10/30

妊娠中のダイエットで低出生体重児増加-新生児に疾患リスク

10月29日(ブルームバーグ):大阪に住むジャズダンス講師、尾崎恵子さんは第二子の妊娠が分かってすぐにダイエットを始めた。

尾崎さん(30)の体重は51キログラム。第一子の妊娠中、体重の増え方が急過ぎると医師にひどくしかられたと振り返る。妊娠中はご飯を食べるのをやめ、毎月の妊婦検診前には食事を抜いた。そのかいあって9カ月間の体重増加は7.8キロ。これは、米国の平均を4.7キロ下回っている。

尾崎さんは今回、医師にしかられはしなかったが生まれた男の子の体重は全国平均の3000グラムを300グラム下回っていた。日本の新生児の体重は30年間にわたって減少している。専門家は、日本の低出生体重児の出生率が先進国で最も高くなっているのは、妊婦が受ける指導が一因とみている。低体重での出生は、後に糖尿病や心臓病の発症につながる可能性もあるという。

早稲田大学胎生期エピジェネティク制御研究所の福岡秀興教授は、「大変な現象が起こっているということだ」と指摘。「妊婦健診ごとにカルテを放り投げて『わたしの言うことが聞けないのか、他へ行け』というような体重管理指導をする方がいる」と語る。

日本産科婦人科学会は、妊娠中の体重管理に関する指針を来年4月に発表する計画だ。米国医学研究所は2009年5月に指針を発表。英国国立医療技術評価機構も同年7月に最新の指針を発表した。

世界と逆行

大半の先進国で妊婦の体重が増加しているのに対し、日本では減少している。日本の新生児の平均体重は1980年と比較して200グラム軽い。世界保健機関(WHO)が定める低出生体重児の基準である2500グラム未満の新生児の出生率は日本では9.6%と、30年前の5.2%から上昇した。

WHOによると、低出生体重児が生まれる原因は早産か子宮内での成長抑制とされている。出生体重は母親自身の胎児期の成長や出生から妊娠までの食生活、受胎時の母親の身体組成の影響を受ける。

WHOによれば、出生時の体重が2500グラム未満の場合、死産や健康不良、身体障害のリスクが高まる。成長が抑制された幼児は、成人同様に冠状動脈の疾患や高血圧、脳卒中、生活習慣などが要因となる2型糖尿病、肥満などのリスクが高くなる。

WHOのチャン事務局長は先週の電話インタビューで「妊娠中の9カ月と出生後の2年間がその後の人生全体の健康の基礎を作る」と語った。

「最悪シナリオ」

人間の発達と疾病について30年間研究しているニュージーランドの首席科学顧問、ピーター・グラックマン氏によると、胎児は環境からの刺激に適応し、発達状況を適合させていく。リギンズ研究所(オークランド)の同氏率いるチームの研究により、胎児期の栄養が不十分で出生後に栄養を過度に摂取するとミスマッチ(不適合)が生まれ、適応変化によって糖尿病や心臓疾患のリスクが高まる可能性があることが分かった。

英サウサンプトン大学でグラックマン氏と共同研究を行った疾病の発生学的起源に関する国際学会のマーク・ハンソン会長は「少なくともこのミスマッチという点から見て、小さく産んで大きく育てるというのは、疾病のリスクという意味では最悪のシナリオとなる可能性がある」と指摘する。

日本は異常

ハンソン会長は「日本は異常だ。胎児期の栄養の低下と出生後の食生活の西洋化という2つの点から見て、疾病のリスクが強まっている唯一の先進国と言える」と述べた。

尾崎さんの出産を担当した坂本平年医師は25年間にわたって患者に体重管理を勧めてきた。太り過ぎた妊婦が大きな胎児の出産でつらい思いをし、胎児もリスクにさらされるのを目の当たりにしてきたからだ。インタビューで「普通のサイズの人は、食べるなと言っても8割は13キロから15キロ増える。安心して産める赤ちゃんの体重は2600グラム前後ぐらい」と語る。

低出生体重児の増加に対応するため、厚労省は06年、妊娠中の体重増加は7-12キロが望ましいとの見方を発表した。米国の場合は11-16キロとなっている。早稲田大の福岡教授によると、日本では多くの医師が依然として妊婦に対し体重を増やすよう勧めようとしない。

福岡教授は「産科外来の一番の中心課題は今までは体重のコントロールだった。これまで自分たちがやっていたことを完全に否定することだととらえている。何十年もやっていた臨床そのものを否定するようにとらえられる可能性がある」と指摘した。

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