1997-98年のアジア通貨危機の際、米政府は、資金不足の企業を救済しようとしているとしてアジア各国政府を非難した。だが、米政府は今月、世界的な金融危機で経営破たんした自国の企業に対し救済措置をとった。この動きをダブルスタンダードと見る専門家もいる。
米連邦準備制度理事会(Board of Governors of Federal Reserve System、FRB)は16日、資金繰りが悪化している米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(American International Group、AIG)の破たんを回避するため、AIGの株式約80%を担保に850億ドル(約9兆円)のつなぎ融資に応じると発表。同日の世界の株式市場は急落した。
今年これまでに米政府は、投資銀行大手ベアー・スターンズ(Bear Stearns)や、米連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ、Fannie Mae)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック、Freddie Mac)の破たん回避のため巨額の公的資金を投入している。
アジア通貨危機の際、米政府と国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)は、アジア各国の政府に対し経営不振企業をいわば見殺しにするよう指示した。米政府の今回の救済策は、当時の対応と対照的だとするエコノミストもいる。
2003-06年にIMFの主任エコノミストを務めたラグラム・ラジャン(Raghuram Rajan)氏は、「当時、米国がアジア(の地元企業の救済)に融資することに反対していた米政府の一部の専門家も、今回は基本的に政府の多様な介入を求めている」と指摘。「『市場に任せて、自然に落ち着くところに落ち着かせよう』と言うのは誠に結構なことだが、投機的な売りに押されて大企業の株価が急落して破たんの危機が迫れば、『そのようなことはあってはならない』と政府が介入するのは至極もっともだ」と語った。
18日のニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、アジア通貨危機当時、韓国に200億ドルを融資する条件として経営不振の銀行や企業を救済せず、そのまま破たんさせるようIMFが指示したという、当時IMFとの交渉に深く関わった韓国のエコノミストYung Chul Park氏の話を伝えた。
現在ソウル(Seoul)の高麗大学(Korea University)教授のPark氏は、米国の金融危機は世界全体が影響を受け、1地域だけが影響が受けたアジア通貨危機の時とは異なるが、「米政府は、今回は当時とは違うシナリオに従っている」と述べた。
世界の金融システムの保護は不可避なことだとして米国の救済措置を積極的に擁護する専門家もいる。米ワシントンD.C.(Washington D.C.)のピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics)のアジア専門家、ニコラス・ラーディー(Nicholas Lardy)氏は、「AIGが破たんしていたら、主に欧州の銀行が大きな影響を受けていただろう。米国はAIGの破たんを回避することで世界に対する大きな役割を果たした」と説明する。「今、我々が目の当たりにしているのは、世界の金融システムの中心にある企業だ」とアジア通貨危機との違いを強調した。
ラーディ氏また、全米第4位の証券会社リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)が経営破たんしたことを挙げ、米財務省は無差別な企業救済を目指しているわけではないことを指摘した。
【9月21日 AFP】
◇米、最大75兆円の不良資産買い取り案を議会に提示
米財務省は20日、公的資金による不良資産買い取り案を議会に提示したと発表した。買い取り規模は最大7000億ドル(約75兆円)で総合的な金融安定化策の最大の柱となる。米政府は週内決着をめざしているが、議会では借り手支援拡大などを求める声も浮上している。
ブッシュ大統領は20日の会見で「金融システムの問題が深刻だから資金規模も大きい」と説明。「何もしないリスクの方が、今回のプランを実施するリスクよりはるかに高い」と強調した。
財務省案によると、買い取り期間は2年。住宅ローンや関連の証券化商品が購入対象。7000億ドルの上限は、買い取る資産の帳簿価格ではなく売買価格で算出する。
議会では、金融危機の深刻な影響を考慮し、買い取り了承に動く公算が大きい。ただ、ローンの借り手支援、公的資金の損失リスク抑制、金融機関経営者の報酬制限などを求める声も浮上している。ブッシュ政権が求める早期決着へ法案の一部追加や修正の可能性もありそうだ。
(日経 9/21)
◇75兆円の不良債権買い取り権限、米財務省が議会に要請
米財務省は20日、金融システムの安定に向け、最大7000億ドル(約75兆円)の不良債権を金融機関から買い取る権限を米政府に与えるよう米議会に要請したと発表した。
米議会側は早急に法案審議を行う考えを示し、週内のスピード成立を目指す。日本の年間予算に匹敵する大規模な公的資金を投入し、米国発の金融危機の拡大を食い止める決意だ。
買い取りに際しては、最も安い売却価格を提案した金融機関の債権を買い取る「逆入札」方式を導入し、国民負担を最小限に抑える方針だ。
民主党のペロシ下院議長は「議会は未曽有の金融危機に取り組むブッシュ政権の提案を吟味し、協力していく」との声明を発表し、早急に法案審議に入る意向を示した。
不良債権の買い取りは2年間の時限措置。即効性を重視して大がかりな新機関の設立は見送る。買い取りの権限を財務長官に与え、不動産や資産管理の専門家が財務長官の指示で実際の業務に当たる。3か月ごとに米議会に状況報告を義務づける。
買い取る債権は、住宅ローンのほか、商業不動産ローン、住宅ローン担保証券などで、9月17日以前に組成されたものに限定する。対象は「米国内で主要な事業展開をしている金融機関」で、外国の金融機関は対象外となる。
買い取り価格については、公的資金の投入額を抑えるため、金融機関に売却価格を自主的に提示させ、その中から最も安いものを選ぶ「逆入札」方式を採用する。買い取った不良債権の売却には期限を設けず、市場動向をにらみながら、時間をかけて売却していく方針だ。
(朝日 9/21)
◇米地銀のアメリバンクが経営破綻…今年12行目
米連邦預金保険公社(FDIC)は19日、米ウェストバージニア州の地方銀行アメリバンクが業務を停止したと発表した。
米銀行の経営破綻は今年12件目で、昨年1年間の3件の4倍にのぼっている。同行の総資産は1億1500万ドル(約120億円)。同行の資産は、同州の銀行パイオニア・コミュニティー・バンクなど2行が引き継ぐ。
FDICは、資本の水準や手元資金などが不足するなどして経営に不十分な点がある「問題銀行」が計117あると発表しており、銀行破たんは今後も続きそうだ。
(読売 9/21)
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