カテゴリー「人類・人間・生物・自然」の67件の記事

2009/12/15

アジア人の祖先は東南アジア経由で北上、ゲノム分析で究明

【12月13日 AFP】現在のアジア人の祖先は東南アジアを経由して北東アジアに移住した可能性が高いことが、アジア全域を対象に実施した各民族集団の遺伝情報の解析から分かったという研究報告が、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。
 
研究は、国際ヒトゲノム計画に携わる研究者で構成される国際組織「ヒトゲノム国際機構(Human Genome Organization)」の支援により、アジア10か国と米国の40の研究機関の研究者による国際共同研究チームが4年かけて行ったもの。

この研究により、南から北に行くにつれてアジア人のゲノムの多様性が高まる傾向が判明した。インドに定住していたとみられるアジア人の共通の祖先が、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの東南アジアに移住し、そこから北上して北東アジアへ広がったと見られることが明らかになったという。

また、従来の学説ではアジア人の祖先の主要な移住ルートは中央アジアからのものなど2つあるとされていたが、今回の研究結果から移住ルートは東南アジアからの1つのみであることが確認されたとしている。

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2009/11/12

人間は特別な存在ではない

◇人間の高い言語能力はチンパンジーと遺伝子わずか1個の差

たった1個の遺伝子の違いが、チンパンジーにはない高度な言語能力を人間にもたらす、大きな原動力となった可能性を、米カリフォルニア大などが突き止めた。

この遺伝子は、他の様々な遺伝子の働きを調節しているため、脳で言語能力をつかさどる部分の発達にも影響するとみられる。12日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 「FOXP2」という遺伝子で、その異常は遺伝性の言語障害を引き起こす。人間とチンパンジーでは、この遺伝子で作られるたんぱく質がアミノ酸2個分だけ異なる。

人間の培養細胞で両者のFOXP2を働かせてみたところ、人間のFOXP2はチンパンジーに比べて、61個の遺伝子を活発化させ、逆に55個の遺伝子の働きを抑えることが分かった。実際の脳組織でも、こうした働きの違いを確認した。

これらの遺伝子が、神経回路の構築などを通じて、文法の理解や発話の能力に影響するとみられる。

人間とチンパンジーの全遺伝情報(ゲノム)の差はわずか1・2%で、それが知性や言語能力の大きな違いをどう生み出したのか、これまで謎だった。

(読売 11/12)

【11月12日 AFP】ヒトが高い言語能力を持ち、よく似た遺伝子を持つチンパンジーが言葉を話さない理由は、たった1つの遺伝子にある2つの小さな違いで説明できるかもしれないとの研究論文が、11日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。言語障害を伴う病気の治療に役立つ可能性があるという。

■言語障害を引き起こす遺伝子「FOXP2」

研究者らは約10年前、ある家系の珍しい先天性言語障害のある全ての人において、FOXP2という遺伝子に同じ欠陥があることを発見した。その後、発達性不全失語症という別の言語障害の患者のグループでも、FOXP2が変異しているケースがあることが分かった。

一方、チンパンジーのFOXP2遺伝子を研究していた生物学者は、この遺伝子によってコーディングされたタンパク質を構成する数百のアミノ酸のうち、2つがヒトとチンパンジーで異なっていることを突き止めた。

ここから、人間とチンパンジーの言語能力の違いはFOXP2の違いによるのではないかとの説が生まれ、論争が続いていた。

■発話の仕組みに影響、言語障害治療に期待

この説を検証するため、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California in Los Angeles)のダニエル・ゲシュウィンド(Daniel Geshwind)教授はヒトとチンパンジーのFOXP2について、たんぱく質合成を比較。また、FOXP2が「マスター遺伝子」としてどのように他の遺伝子を活性化させたり、働きを抑えているかを調べた。

実験の結果、FOXP2はヒトとチンパンジーで異なる影響を遺伝子に与えていることが明らかになった。ヒトのFOXP2は、高度な認知機能と言語をつかさどる大脳皮質の領域に変化を誘発するとともに、認知機能と運動協調性に関与する大脳基底核の線条体にも影響を与えていた。

ゲシュウィンド教授は、ヒトのFOXP2は発話の神経運動だけでなく、身体的な構造にも関係している可能性があると見ている。言い換えれば、チンパンジーには「発話のための適切な器官」がないため、仮にヒトの脳をチンパンジーに移植しても話せるようにはならないはずだという。

研究チームは、FOXP2が影響を与える遺伝子を調べ、自閉症や統合失調症など言語障害を伴う病気に特徴的な遺伝子の変異を発見できれば、治療法の開発につながる可能性があるとして期待を寄せている。

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2009/09/18

地中海地域の哺乳類の6種に1種が絶滅の危機、IUCN

【9月16日 AFP】国際自然保護連合(International Union for the Conservation of Nature、IUCN)は15日、地中海地域に生息する哺乳(ほにゅう)類の6種に1種が地域レベルで絶滅の危機にさらされているとする報告書を発表した。都市化や農業、気候変動により生息域が破壊されつつあるのが主な原因だという。

調査した320種の哺乳類のうち、絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧(きぐ)IA類」に指定されたのは全体の3%で、この中には地中海モンクアザラシ、スペインオオヤマネコなどが含まれている。

IA類ほどではないが絶滅の危険性が高い「絶滅危惧IB類」には全体の5%が、近い将来「絶滅危惧I類」のランクに移行することが確実と考えられる「絶滅危惧II類」には全体の8%が指定された。

また、絶滅の危機が指摘されている49種のうち、20種は地中海地域にしか生息していないという。

報告書は、哺乳類に対する最大の脅威は「生息域の破壊」で、絶滅危惧種に指定された種の90%がこの影響を被っていると指摘。「地中海地域の豊かな生物多様性を失わないためにも、動物の生息域を保護する国際的な取り組みが必要」だとしている。

■カバなどは既に姿を消す

絶滅危惧種の生息密度が高い地域は、トルコの山地、アフリカ北西部、レバント(Levant)地方(古代の地中海東側沿岸国で、現在のシリア、ヨルダン、イスラエル、レバノン、パレスチナ自治区)となっている。 

特に絶滅が危惧されているのはシカなどの大型草食動物やウサギ、肉食動物の類で、カバやダマジカなど8種が既にこの地域から消えている。

個体数の推移については、全体の4分の1以上にあたる27%の種が減少し、31%の種は現状維持。増えているのは3%の種に過ぎなかった。残り39%の種については不明だという。

なお、調査対象にはクジラとイルカは含まれていない。

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2009/08/02

生物多様性:6割「聞いたこともない」 内閣府世論調査

内閣府は1日、「環境問題に関する世論調査」の結果を発表した。G8環境相会合などでの主要議題「生物多様性」という言葉を「聞いたこともない」との回答が61.5%に上った。政府の第3次生物多様性国家戦略では、11年末までに50%の認知度達成を目指しているが、国内で理解が進んでいない実態が浮き彫りになった。

調査は6月、全国の20歳以上の男女3000人を対象に面接方式で実施。1919人から回答を得た(回収率64%)。

生物多様性は、地球上に多様な生物が存在し、それぞれがかかわりながらバランスを保っている状態のこと。来年には名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、多様性保全のための新たな目標や、遺伝子レベルで医薬品などのもとになる有用生物を取り扱う国際ルール作りなどが議論される予定。

調査では、生物多様性の意味を知っている人は12.8%、「意味は知らないが聞いたことがある」は23.6%だった。

一方、多様性の意味を説明した上で環境保全への考え方をたずねたところ、「人間の生活が制約されない程度の環境保全」との回答が過半数を占めた一方で、「制約があっても環境保全を優先」が約4割を占めた。環境省生物多様性地球戦略企画室は「生物と触れ合うなど体験を通じて、多様性の意味と重要性をもっと多くの人に理解してほしい」としている。

(毎日 8/2)

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2009/04/21

南極氷河の下に数百万年前の生態系、米大学研究

【4月20日 AFP】光も酸素もない南極の氷河の下で、数百万年前の生態系が維持されている。――米モンタナ州立大学(Montana State University)などによる研究結果が、17日付けの米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

研究チームは、南極大陸東部のテイラー氷河(Taylor Glacier)の下から流れ出している「血の滝」と呼ばれる、鉄分を多く含む赤褐色の水を調査した際にバクテリアを発見した。氷河下の冷たく塩分豊富な環境に生息するこうしたバクテリアは、体内の硫黄化合物やイオン化合物を使って生きていくことで環境に適応していた。

また、テイラー氷河下の塩水たまりは、平均水温がマイナス10℃であるにもかかわらず、塩分濃度が海水より3-4倍高いために凍らないこともわかった。研究チームは、こうした生態系は、地球全体が氷河で覆われていた数百万年前の「全球凍結」時代の生態系を今に伝えるものだとしている。 

研究チームは、光合成ができないこうした環境において生態系が維持されてきたメカニズムを解明しようと試みている。共同執筆者のジョン・プリスク(John Priscu)教授は、「(南極大陸下の)生態系は、厳しい環境下で長い間隔絶されてきた。こうした生態系の研究は、地球外生命の可能性を探る上でも役立てることができる」と話している。

火星および、木星の衛星エウロパ(Europa)は、分厚い氷で覆われており、その下で生命が育まれているかもしれない。

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2009/04/12

コアラに白血病蔓延 絶滅か、進化か

◇国内コアラの9割がウイルス感染…白血病・リンパ腫の原因

コアラの白血病やリンパ腫の原因とされる「コアラレトロウイルス」に、国内で飼育中のコアラの約9割が感染していることが、京都大ウイルス研究所と日本動物園水族館協会の調査で明らかになった。

人には感染しないが、コアラにとって数の急減など深刻な危機につながると懸念される。

野生コアラは豪州北東部系と南部系に大別される。ウイルスは北から南へと感染が広がり、今では北東部系のほぼ100%が感染している。このため、同研究所の宮沢孝幸准教授らが2007年から国内9動物園のコアラ全62匹のうち50匹の血液検査をした。

その結果、北東部系は39匹すべてから、南部系も11匹中4匹からウイルスが検出された。感染源は不明だが、豪州からの輸入前に感染していた可能性が高い。このウイルスは生殖細胞に侵入して子へ受け継がれるため感染防止が難しく、日本生まれの38匹のうち36匹が感染していた。

北東部系が白血病などで死ぬ割合は10%以上と他の動物に比べ高いが、宮沢准教授は「絶滅に向かうのではなく、病気に強いコアラが増えると信じたい」と話す。

(読売 4/11)

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2009/02/25

アルゼンチン沖のペンギンが飢餓状態

【2月24日 AFP】アルゼンチン沿岸沖に生息するペンギンが、海洋環境の変化から、餌を見つけるために10年前に比べて40キロも多く泳がなければならなくなったことが原因で、飢餓状態にあるという。

米ワシントン大学(University of Washington)のディー・ボアスマ(Dee Boersma)教授(生物学)によると、ペンギンは餌を取った後にもまた、40キロを泳いで繁殖地まで戻らなければならず、泳ぐ距離が合計80キロ伸びた分、巣で待つつがいの一方は飢餓状態になっているという。

アルゼンチンの首都ブエノスアイレス(Buenos Aires)南方約1600キロのプンタトンボ(Punta Tombo)動物保護区周辺では、乱獲、汚染、気候変動が原因で、魚の生息数が減少していると、ボアスマ教授は指摘する。餌の減少から同保護区のペンギンのコロニーも縮小しており、つがい数は22年前の30万組から20万組へと20%以上減った。

餌を求めてこれまでより長く泳がなければならなくなったことから、ペンギンが繁殖地へ戻る時間も遅くなっており、繁殖率も著しく低下している。

より良い繁殖地を求めて北へさらに400キロ移動したペンギンもいるが、元の繁殖地に残ったペンギンたちは、雨で巣が流されるなど卵や小さなひなの生存が危険にさらされている。

米野生生物保護協会(Wildlife Conservation Society、WCS)のペンギン部門ディレクターでもあるボアスマ教授は、米イリノイ(Illinois)州シカゴ(Chicago)で12-16日に開催された米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science、AAAS)年次総会で、今回の研究結果を発表した。

◆南極のペンギン泥まみれ、雨増え・氷減り・エサ減る

Penguin_doromamire
南極大陸から南米に突き出す南極半島で急速な温暖化が進んでいる。生命に満ちた真夏の半島と周辺の島々。そこではペンギンが生暖かい雨に打たれていた。

半島西岸に連なる南シェトランド諸島のロバート島。アルゼンチン発の客船で9日に訪れた営巣地では、1000羽のヒゲペンギンが泥まみれで暮らしていた。

波打ち際にはゾウアザラシの群れ。丘の斜面は緑の草で覆われ、ヒゲペンギンのヒナの甲高い声が響く。気温14度。防寒着を着込んだ体に汗がにじんだ。

ヒゲペンギンは毎年11~12月に卵を産み、1月にヒナがかえる。巣立つまで親鳥の口移しで大量のオキアミを食べる。

ひと組の親子が目に留まった。ときおり降る雨のなか、ヒナは必死に親を追うが、ぬかるんでうまく走れない。親を見失い、途方に暮れたように天を仰いだ。

地球の年平均気温は過去100年で0・74度上がったが、南極半島は60年で3度。国立極地研究所の高橋晃周准教授によると、ロバート島に近い別の島では、ヒゲペンギンやアデリーペンギンが過去30年で半減。原因として温暖化に伴う氷の減少が指摘されている。

海に浮かぶ氷の底はオキアミが食べる藻類の宝庫。「氷の減少で藻が減り、それを食べるオキアミも減る。その結果、オキアミを食べるペンギンの生存率も低下した」という仮説だ。

水をはじく機能がある毛に生え替わる前のヒナが雨に打たれ、夜間に体温を奪われて凍りつく可能性も指摘される。1950年代以降、半島の年間降水日数は10年ごとに12日ずつ増えている。

ロバート島に近いバリエントス島で雨は本降りになった。泥まみれのヒゲペンギンのヒナが寒さに震えていた。仲間につつかれても1、2歩よけるのがやっと。近くでトウゾクカモメがペンギンの死骸(しがい)をむさぼっていた。

(読売 2/19)

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2009/01/14

侵入生物根絶計画で、逆に環境破壊 豪領世界遺産の島

【1月13日 AFP】オーストラリアと南極の間に横たわる世界遺産、マッコーリー島(Macquarie Island)への侵入生物種の根絶を目指した試みが、逆に環境の激変を招いている。13日、英生態学会(British Ecological Society)の発行する「ジャーナル・オブ・アプライド・エコロジー(Journal of Applied Ecology)」誌に研究論文が発表された。

同島の侵入生物種の根絶計画とそれがもたらす結果に関する研究を、オーストラリア環境・遺産省南極部(Australian Antarctic Division)がまとめたもので、複雑に張り巡らされた生態系に不用意に手を加えると何が起きうるかについて教訓を示している。
 
事の起こりは19世紀初頭、同島に複数のネコが捨てられ、急速に野生化していった。1878年には、アザラシ狩猟者たちが同島にウサギを持ち込んだ。

ウサギはその後、植生を破壊するほど増え続けたため、豪政府は1960年代後半、粘液腫ウイルスによる個体数調整に乗り出した。その結果、ウサギはピーク時(1978年)の13万羽から1980年代には2万羽に激減した。

これでマッコーリー島の植生は回復したものの、作戦は負の結果ももたらした。それまでウサギを餌としていたネコたちが、ウサギの激減に伴い、マッコーリー固有種の鳥を襲い始めたのだ。

鳥の絶滅を恐れた当局は1985年、ネコの根絶計画に着手。2000年までにネコは1匹残らず駆除されたものの、今度は粘液腫ウイルスの影響を受けないウサギが、天敵がいなくなったことで再び増殖を始め、5年もたたぬうちに植生に多大なダメージを与えてしまった。中には草がまったくなくなり、土がむきだしになってしまった地域もあった。

これは生態学でいう「栄養カスケード」の一例だ。ある種の個体数が急激に減少または増加すると、それがもたらす影響が食物連鎖全体に及ぶという現象だ。

論文の主執筆者である豪南極部のダナ・バーグストーム(Dana Bergstrom)氏は「2000年から07年の間に広範囲の生態系が破壊され、数十年かけた環境保全の努力が無に帰してしまった」と嘆く。また「(生態系への)介入は大局的な視点を持って行われるべきで、間接的な影響も含めたリスク評価が不可欠。これを誤れば、莫大な経費がかかることになる」と、世界の環境行政に注意を促している。 

実際、マッコーリー島の問題を解決するためには、約2400万オーストラリアドル(約14億円)の超過経費がかかると見込まれている。

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2008/12/05

「入れ替わり」の錯覚に成功、スウェーデン神経学チーム

【12月4日 AFP】スウェーデン最大の医学系大学であるカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)は3日、同大の神経学チームが、被験者に自分の体と他人の体が入れ替わったように錯覚させることに成功したと発表した。

研究を率いた同研究所のヘンリック・エールソン(Henrik Ehrsson)氏は実験結果について「身体的自己に対する脳の知覚を、容易に変えられることを示している」と述べ、感覚的印象を操作することで、体外離脱を感じさせるだけでなく、他人の身体を自分のものと錯覚させることも可能だと説明した。

実験の1つでは、マネキンの頭部に2台のカメラを取り付け、被験者には2つの小型スクリーンを仕込んだ眼鏡を掛けさせた。このスクリーンとカメラを接続し、マネキンが「見る」ものを被験者が見ている状態にした。そして、マネキンと被験者の頭部を同時に下に向けると、被験者は本来の自分の身体ではなく、カメラを通して見えたマネキンの体の映像のほうを自分の体だと認識した。

また、棒を使って被験者とマネキンの腹部に触れる実験では、被験者はマネキンと自分の体が入れ替わったように錯覚した。被験者とマネキンの腹部を同時に触ると、被験者はマネキンの腹部が触られているのをカメラを通じて見るだけで、自分の腹部が触られているところは見なくても、自分の腹部も触られていると実感した。被験者は「マネキンの体が自分のものだと強く感じた」という。

もう1つの実験では、カメラを別の人物の頭部に設置し、被験者にはスクリーン付きの眼鏡でその映像を見せた。この人物と被験者が互いに向き合って握手をすると、被験者はカメラが映しだす自分の姿ではなく、カメラを付けた別人の体が自分のもので、自分自身と握手をしたように錯覚した。この錯覚は、被験者と別の人物の性別が異なっても起きたが、いすなどカメラを取り付けた対象が物だった場合には起きなかった。

研究結果は、バーチャルリアリティーやロボット技術で実用化が可能で、さらにほかの分野で利用できる可能性もあるという。「自分自身を知覚する仕組みや、自分が一定の集団に属していると考える仕組みについて疑問を呈することができる。先入観を打ち砕くことも可能かもしれない。教育・医療分野からゲームにまで使用できる可能性がある」とエールソン氏は指摘した。

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2008/10/25

アライグマにウイルス感染広がる ジステンパー半数に

野生化したアライグマの半数が、野生動物の大量死を招くジステンパーウイルスに感染していることが、山口大農学部の前田健准教授らの調査で分かった。日本脳炎ウイルスにも7割が感染していた。タヌキなど他の動物でも感染が確認され、ペットや家畜、人に影響がないか心配される。26日から岡山市で開かれる日本ウイルス学会で発表する。

前田さんらは07年6月から、関西地方で捕獲されたアライグマ104匹の血液を調べると、約半数の54匹でジステンパーウイルスに感染した痕跡が見つかった。タヌキ19匹のうち4匹が感染し、イノシシやシカも感染していた。

ジステンパーウイルスは、呼吸器を介して、主に犬猫の仲間に感染する。犬が発症すると、致死率は30~80%と高い。国内ではタヌキが死ぬ例が相次ぎ、世界的にも90年代以降、ライオンやアザラシなどの大量死が見つかり、野生動物への被害が深刻になっている。人には感染しない。

前田さんによると、アライグマは全国的に増えているほか、行動圏が広いため、タヌキなど他の野生動物に広げている可能性があるという。

さらに、蚊の出る季節に捕獲したアライグマ68匹のうち、約7割の47匹に日本脳炎ウイルスに感染した痕跡があった。イノシシも36匹中、約8割で見つかった。

日本脳炎ウイルスは、ブタや野生動物の体内で増え、蚊を媒介して人や他の動物に広がる。鳥取県では03年に馬が死んだ。人が感染しても発症しないことが多いが、脳炎になると危険が伴う。患者発生は92年以降、年間10人以下で死者は出ていない。

前田さんは「日本脳炎に感染したアライグマやイノシシが人里に出て、蚊を介して、予防接種をしていない子どもに感染する危険も否定できない。外来のアライグマは駆除の徹底が必要だ」と話している。

(朝日 12/25)

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